〘転校生に冷たい〙

それは、隣の席の人物としてかなりまずいことだと思う。

「隣の席の人」は、

進んで転校生の手助けをし、

転校生が学校に馴染めるように仲良くし、

学校や生徒の紹介をし、

あわよくば転校生にとって1番頼れる人にならなければならない。

そんなことは、とうに知っている。

理解していると思っていたけど。

「転校生の人と、仲良くなれたらな」

なんていう淡い期待は、

小学生の頃に裏切られたから。

もう期待はしない。

関わるのも最小限にして。

本当の自分は、学校では出さずに。

弱みを見せれば、立場は一瞬にして逆転するのだから。



『…木ノ瀬さん?』

なんて言って、屈んで目線を合わせてくる彼は、

私の思いなんて気にもせず。

まぁ、そりゃそうなんだけどさ。

分かられてたら怖いし。

…もちろん、転校生側だって大変なのは分かってる。

新しい場所で新しい生活を始めるから、

慣れないし、心細いんだろう。

でもどうやったって、私は君とは仲良くなれない。

どうやったって、君は私を変えられない。

私と君は、住んでいる世界が違うから。

関われば、〘邪魔者(陰キャの私)〙は消されてしまうから。

君は、あのお姫様(一軍女子)たちのところで、楽しく過ごすんでしょ?

私と君の関係は、「隣りに座っている」ってだけ。

「クラスメイト」ってだけ。

「転校生と補佐役」ってだけだから…

お願いだから、関わらないで。

私にとっても、君にとっても、デメリットがないように。

必要以上に、話しかけてこないで。

私が、君が(推し)だと、勘違いしてしまわないように。





──私、最低だ。

思考がハッキリして、自分が恥ずかしくなっていく。

夢を見てる私は、最低だ。

声が似てる人なんていくらでもいるのに。

ドッペルゲンガーみたいな感じできっと、

声がほとんど同じ人も3人くらいいるよ。

颯天くんが私の推しの実況者なわけないじゃん。

声バレしないように声とか変えてるものじゃない?

颯天くんの声は、声を変えたあとの推しに似てるだけで、

推しの声は本当はもっと高いとか、低いとか、あるはずだよね。

そうだよ。

颯天くんが私の推しとかありえないって。

いくら彼が年齢不詳で、声が似すぎてて、ふんわりした雰囲気まで同じだとしても。

絶対に違うよ。

そうやって自分に言い訳をして、いつだって自分に蓋をする。

相手優先。

自分はいつだって底辺のカスみたいなもの。

そう思わないと、

思えないと、

辛いのは自分だって学んだ。

…知ってる。

私はただただ、臆病なだけだ。

だから全部全部しまい込んで。

愛想笑いして。

親友(葉那)にさえも隠し事。

ああ、つくづく最低だな。

分かってるけど、

分かりたいけど…

もう全部全部、諦めたかった。

学校行きたくないな。

一気にトラウマが蘇ってきて、

保健室へと向かった。