奪いにきたのは獣な元カレ 昼は教師で夜はヤクザに豹変する若頭の十年愛





 迎えたクリスマス・イブの放課後。
 部活終わりに下校していく生徒たちを見送って施錠をした後、学校の正門へと向かう。
 門の向こうにはクリスマス気分を満喫しているのかイルミネーションが燦燦と輝いていて、なんだか胸が躍った。
 今日は大牙くんと約束をしている。
 明日告白され直すのだと思うと、まるで子どもの頃に戻ったみたいで落ち着かない。
 牛口先生の一件が片付いていないのが気がかりだけど――
 その時――

「兎羽先生」

 突然背後から声がかかる。現れたのは元婚約者の牛口先生だった。

「牛口先生……」

 なんだかやけにジロジロ上から下まで私のところを見てきて気持ちが悪くて仕方がない。
 そうして、思いがけないことを言いはじめる。

「僕に隠れてあの新任教師の龍ヶ崎と付き合っていたんだろう?」

「そんなわけなくって……」

「しかも、俺が裏で色々やってるのを調べまわってるらしいじゃないか?」

「それは牛口先生が悪くて……きゃっ……!」

 牛口先生が私の肘を突然掴んできた。
 コート越しだけど嫌悪感が増す。
 その時――さっと影が差す。
 なんだろうって思ったら、柄の悪い男の人が二人。私を取り囲むようにして現れた。
 こんな暗い時間に男の人たちに囲まれたら怖くて仕方がない。

「だったら話が早い。知られてしまったんだったら、君も僕の裏の仕事に巻き込むまでだよ、兎羽先生」

 楽しみにしていたクリスマス・イブ。

 下卑た笑いを浮かべた元婚約者に掴まってしまったのだった。