そうして、元々愛想が良いし誰にでも優しいものだから、年上の女性教師たちからはもちろんのこと、年配の先生たちや若手の教師たちからも瞬く間に大人気になってしまった。
ただ……ちょっとだけ牛口先生からだけは苦手がられてるみたい。そりゃあ、大牙くんの態度ときたら『まゆりちゃんに近づく男はみんな嫌い』っていう態度なんだもの、仕方ないかなと思ってる。
とにかく、そんな感じで派手に目立ってる。
素直な大牙くんらしいと言われればそうなんだけど……
学校中、大牙くんの噂で持ち切りになっていて、おかげで私と牛口先生の婚約破棄事件はどこかに吹き飛んでしまった……
たまたまなのかな?
それとも、まさか頭の良い大牙くんの作戦だったり……?
そんなことはないよね……?
そんなことを思い耽っていると――
「まゆりちゃん! ……じゃなくて兎羽先生!」
「――きゃっ……!」
私を見かけるや否や、ところかまわず抱き着いてこようとするんだよ。
正直、大牙くんの教師として大人気なのに、大問題に発展しそうな案件。
さすがに高校生たちの前では絶対によくない態度だと思うんだ。
不順異性交遊禁止ですとか言ってる立場なのに学校でこんな調子だったら、さすがに親御さんたちにも誰かから連絡がいって苦情が来るんじゃないかなとハラハラしてる。
今もさっとなんとか避けて周囲をきょろきょろ伺ってしまった。ここは体育館裏。誰もいないのを確認してから、私は大牙くんに向かって顔を真っ赤にしながら叱りつけた。
「ちょっと、龍ヶ崎先生!! 学校の中で抱き着くのはダメです!!」
「もう、まゆりちゃんは相変わらず堅いんだから。あ、でも、今の台詞って、学校の外なら良いってことかな?」
大牙くんが「良いこと思いついた!」みたいに得意げな笑顔を浮かべてくる。
「――っ……! そういうわけじゃあ……!」
二人でわあわあ言い合っている、その時――
「スキンシップ、大いに結構」
誰もいない場所なのに、尊大な言い回しの声が聴こえたものだから、びくんと身体が大きく跳ね上がった。
声の方向に視線を向けると――


