ラピスラズリ ~前世の記憶を思い出した伯爵令嬢は政略結婚を拒否します~

つい先程まで使っていた応接室のソファに座って、温かい紅茶を飲み、ほっと一息つく。

「安定のおいしさね」
と褒めた。

「カノン様?」
「ん?」

「最近、カノン様の笑顔が自然ととても可愛らしゅうございますよ」
「え?どうしたの突然?」

「少し前から思っていたのですが、指で口角をあげる癖がなくなって、自然な笑顔をなさっています」

確かに・・・。
というより、18歳になっても作り笑い一つもできない方がやばいんじゃないのかしら。
奏音時代から、社会人として職に就いていたのですもの。
作り笑顔だって楽勝ですわ。

「アイシャは本当に褒め上手ですわね」
と微笑んだ。



『コンコンコン』

お父様がいらした。
その顔は貴族らしからぬ、喜びの感情が表に出まくっている。
相当いいことがあったのね。

「何かいいことでもございましたか?」
と尋ねると、お父様は笑い皺をさらに深めて、私が座っている長ソファに腰を降ろした。

「カノン、先程国王陛下と話をしてきたぞ」
私にくっつくように座って両手を取る。

ち、近いなあ。
私は距離の近さに背中を逸らせながら、
「国王陛下と・・・ですか?」
と尋ねた。
「ああ。来月、宮廷舞踏会が開催かれるだろう?そこでベルナルト様とお前の婚約のお披露目をすることが決定したぞ。よかったな」
「ええええええ!!??」

ない!聞いてないわ!!
婚約者候補になる契約は交わしたけれど、婚約者にはなる予定はありませんわ!!!