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「カノン様、カノン様」
側仕えのアイシャに呼ばれて、自分の意識が現実からトリップしていたことに気が付いた。
「ああ。ごめんなさい」
慌てて目の前の状況に集中する。
「大丈夫でございますか?やはり今日は・・・」
「問題ないわ。少しぼーっとしてしまったみたい。さっきまで眠っていたせいかしら」
「ですが・・・「アイシャ」」
心配するアイシャの言葉を遮る。
そして、微笑んでアイシャに大丈夫と伝えた。
視線を『ルカ』に移し、話しかけた。
「それで何をお聞きになりたいのかしら?」
「私はルーカス・スティール・モンローと申します。
ベルナルド様の側近です。
それでは、いくつか質問にお答えください」
「分かりましたわ。どうぞ」
ルーカスがしてくる事故に関する質問に丁寧に答えて行く。
ルーカスと話しながら、私の心臓がだんだん自己主張を強めていることに気が付いていた。
ルーカスの顔は瑠伽とは違うけれど、その表情や仕草の所々に出会った頃の瑠伽の面影を見つけてしまったからだ。
真剣な表情。
相手が何を考えているのか読み取ろうとする視線。
親指で唇をなぞる癖。
そして何より、この声…。
低くよく通る声。
この声を聞くと、まるで胸が締め付けられるように苦しい。
そして、愛しいと心臓がうったえてくるように音を立てる。
ちょ、ちょっと待って!
瑠伽って誰?
あの映像はなんなの?
私の記憶?
どうしてルーカスの声を聞くとこんなに動揺するの?
初めて話すルーカスを見て愛しく思うのはなぜなの?



