ソファに寝転んでいる間、ずっと背中を摩ってくれていたおじさん。


さすがに眠気は来なかったけど、何を考えているのか分からない虚な目で、遠くを見ているおじさんを観察し続けるのも疲れてきた。




「おじさん。私の名前がないのは、産まれてないからって言いましたよね。何でそんなことしたんだろう。

お母さんも私を沢山叩いて、あんたが居るから私は不幸だって言ったんです。それなら、私を捨てたら良いのにって思ったんです」


「…酷いな。でも、そんな簡単に捨てられない理由がお母さんにはあるのかもしれないな。俺は親になったことないから分からないけど、親は子どもに無性の愛を捧げるって言葉があるんだ。

見返りを求めることなく愛情を注ぐことが、親としての役目で幸せなことだって。どんなに醜くても自分が産み落とした子どもは、やっぱり愛おしいんだよ」