授業が終わった帰り道のことだった。


 「あ、あの!舞白さんですよね?」
 「へ?は、はい」
 呼ばれて振り替えるとそこには翔琉と同じ制服の女子がたっていた。舞白が通う大学には、付属の高校がある。高校はすぐ近くにあるので学内に高校生がいても変ではないが制服姿は目立つ。

 てか、かわいらしい女の子なんですけど!!
 例えるならそう小動物!ウサギとか!腰まであるサラサラな黒髪に、日焼けを知らないほど白い肌。ぱっちり二重の目と形の良い唇。そして華奢で小柄。やばい可愛い。

 けど、どうして私を知っているんだ?

 彼女は少し恥ずかしそうにしながら、舞白の目をしっかりと見る。
 「あ、あの!翔琉君をタブらかすのやめてください!」

 「は?」

 舞白は思わずポカンと口を開ける。

近くを通りかかる人もギョッとした顔で見てきた。

や、やめてー!!
な、何故私が高校生を誘惑すると思うの!!

と、思う気持ちを宥め、なんとか冷静になる。
 「えーっと、ここは目立つから場所を変えようか」
 





 「舞白さん、いきなりすみませんでした」
 「あー大丈夫よ。じゃあさっそくだけど、さっきのこと聞いてもいいかな?」
 とりあえず木陰にあるベンチに並んで座り、優しく聞いてみる。
 「私は翔琉君が好きなんです。いじめられていた私を救ってくれた。前は結構仲良かったんですけど、高校に上がってから素っ気ないし、猫被ってるし、もうなんなんですか!!」
 突然暴れだし、地団駄を踏んでる。

 あれ、思ってた小動物キャラが壊れていくぞ。

 「は!すみません。お恥ずかしいところをお見せしてしまいました。えっと、つまり私が言いたいことは翔琉君を元に戻してください!お願いします!」
 と、頭を下げてきた。

 彼女の話はよくわからないが、翔琉をどうにかして欲しいのは私の方なんだけど!!私からもお願いしたいんだけど。

 「…………え、えっと。とりあえず名前教えてもらってもいい?なんて呼んだらいいかな?」
 「は!名乗りもせずにすみません。私の名前は篠江永久(しのえとわ)です。よろしくお願いします舞白さん!」

 今は素敵な笑顔だ。うーん、感情の浮き沈みが激しい子だなぁ。

 「あー、あとさ何で私の名前を知ってるの?」
 「それは…翔琉くんをいつも見てるので。一緒にいるところも見かけたことがあって、それで」

 あ、それストー…これ以上はやめておこう。

 「えっと篠江さん、こういうのは直接本人に言ってみるのがいいと思うよ」
 「翔琉くんに言ってもあなたの誘惑で効かないんですよ!」
 「え、えぇ…………」
 「あぁ、そうだ。舞白さん連絡先を交換しましょう!そして、翔琉君のこと逐一報告してください。時間と内容を細かく教えてくださいね」

 顔近い!!言ってることはメチャクチャだけど可愛すぎて頭に入ってこない。
 気付けば私の手にスマホがあり、ピロリンと音が鳴ると『トワ』とアイコンが表示されていた。アイコンまで可愛いっ!

 「舞白さん引き留めてしまって申し訳ございませんでした。今日はお時間をいただきありがとうございます」
 と、花が咲いたように笑うので許した。

 あれ、なんで連絡先増えてんだ!?それもまた高校生なんだけど!!