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結婚が告げられてからというもの、ブランシュは目が回るほどに忙しくなった。
というのも、彼女の人生に結婚という選択肢があるとは、ブランシュ自身も家族も使用人も誰ひとりとして想定していなかったので、大急ぎで必要なものをそろえなくてはならなかったからである。
外出することのなかったブランシュは、よそ行きのドレスすら持っていないのだ。
母は急な結婚だからあちらで準備するだろうと投げやりだったが、体裁を人一倍気にする父はそれを許さなかった。
口の堅い仕立て屋を大急ぎで呼びつけて、使用人に対して、決して恥ずかしくないだけの準備を整えるようにと口を酸っぱくして命じていた。
ブランシュはブランシュで、祖母からもらったものはなにひとつとして残していきたくないと、シャルリーヌにもらった本や彼女の形見などを大急ぎで箱や袋に詰めていく作業に忙殺された。
祖母が逝去した際、姑を嫌っていた母によって、祖母のドレスなど大半のものは処分されてしまったが、ブランシュがこっそりと隠し持っていた形見は多数存在する。
それはシャルリーヌが生前にブランシュに渡したものが大半だったが、これがまたなかなかの量なのだ。特に本はとんでもない数がある。
父も、もともとこの家にあった以外のシャルリーヌがブランシュに買い与えた本は、邪魔だから持っていくなり処分するなりしろと言った。
処分されてはたまったものではないので、ブランシュは荷物をまとめては、ひと足先にリオネルが向かったエスポワールへ向けて荷物を送るという作業を繰り返した。
リオネルからは荷物があればエスポワールにある領主の館――古い城があるらしい――へ送って構わないと言われていたからだ。
こうして、ドレスを仕立て、真新しい家具やなんかも用意して、公爵令嬢が嫁ぐにふさわしい準備が急ピッチで進められ、ブランシュは、春を待たずして、エスポワールへと旅立つことになったのだった。
結婚が告げられてからというもの、ブランシュは目が回るほどに忙しくなった。
というのも、彼女の人生に結婚という選択肢があるとは、ブランシュ自身も家族も使用人も誰ひとりとして想定していなかったので、大急ぎで必要なものをそろえなくてはならなかったからである。
外出することのなかったブランシュは、よそ行きのドレスすら持っていないのだ。
母は急な結婚だからあちらで準備するだろうと投げやりだったが、体裁を人一倍気にする父はそれを許さなかった。
口の堅い仕立て屋を大急ぎで呼びつけて、使用人に対して、決して恥ずかしくないだけの準備を整えるようにと口を酸っぱくして命じていた。
ブランシュはブランシュで、祖母からもらったものはなにひとつとして残していきたくないと、シャルリーヌにもらった本や彼女の形見などを大急ぎで箱や袋に詰めていく作業に忙殺された。
祖母が逝去した際、姑を嫌っていた母によって、祖母のドレスなど大半のものは処分されてしまったが、ブランシュがこっそりと隠し持っていた形見は多数存在する。
それはシャルリーヌが生前にブランシュに渡したものが大半だったが、これがまたなかなかの量なのだ。特に本はとんでもない数がある。
父も、もともとこの家にあった以外のシャルリーヌがブランシュに買い与えた本は、邪魔だから持っていくなり処分するなりしろと言った。
処分されてはたまったものではないので、ブランシュは荷物をまとめては、ひと足先にリオネルが向かったエスポワールへ向けて荷物を送るという作業を繰り返した。
リオネルからは荷物があればエスポワールにある領主の館――古い城があるらしい――へ送って構わないと言われていたからだ。
こうして、ドレスを仕立て、真新しい家具やなんかも用意して、公爵令嬢が嫁ぐにふさわしい準備が急ピッチで進められ、ブランシュは、春を待たずして、エスポワールへと旅立つことになったのだった。



