「一族の恥」と呼ばれた令嬢。この度めでたく捨てられたので、辺境で自由に暮らします ~実は私が聖女なんですが、セカンドライフを楽しんでいるのでお構いなく~

 ものの五分もしないうちにシャプドレーヌ公爵家へ到着すると、リオネルは目を丸くしている公爵夫妻に、手短にここに来た理由を告げた。
 事前に先触れも、状況確認も入れなかったのは、もちろんリオネルがブランシュの置かれている状況を知っているからである。
(下手に伺いを立てると、なにかと理由をつけて断られかねないからな)
 エスポワール行きを決められたリオネルは、それほど悠長にしてはいられない。
 理由をつけてのらりくらりとかわされ、無駄に時間を使うことは避けたかった。
 王妃と話をしてから一時間も経っていないので、おそらくあちらからの情報も入っていないだろう。アルレットは自分で話をつけるようにと言ったので、気を利かせて裏から手を回すようなことをするはずがない。
 リオネルがブランシュを娶りたいと聞いた公爵夫妻は目を剝いて慌てはじめた。玄関先でする話でもないので応接間には通されたが、さっきからふたりそろっておろおろしている。
「で、殿下、その、娘は体が弱く……」
 世間一般に流れている噂通りのことを言ってやんわりと断ろうとしてきた公爵を、リオネルはにこりともせずに遮った。
「ブランシュの事情は、大叔母から聞いて知っています」
 リオネルのこのひと言に、公爵夫妻の顔色が目に見えて変わった。
 公爵は青ざめ、逆に公爵夫人はあからさまに不機嫌そうな顔である。
 リオネルはこのふたりの心情に配慮してやる必要はないと判断した。