「一族の恥」と呼ばれた令嬢。この度めでたく捨てられたので、辺境で自由に暮らします ~実は私が聖女なんですが、セカンドライフを楽しんでいるのでお構いなく~

 王妃の部屋を辞した後、リオネルは一度自室に戻り、そしてすぐにシャプドレーヌ公爵家へと向かった。
 シャプドレーヌ公爵家のタウンハウスは、城から歩いていける距離にあるが、これから求婚しようという男が呑気にひとりで歩いていくのはどうかと思いなおし、これが正式な訪問であることを内外に示すため、王家の紋章の入った馬車を使用することにした。
 馬車の用意をさせていると、おおかた遊びに出かけていたのだろう、異母弟のリュカが城の玄関前に停められた伯爵家の馬車から降り立った。
 そういえば昨日から姿を見ていないので、昨夜はこの馬車の持ち主である伯爵家にでも泊まったのだろう。
(……まったく、王太子のくせに婚約者でもない女性の家を転々と)
 銀色の髪に青い瞳のリュカはリオネルよりふたつ年下の弟で、顔立ちも少なからず似通ったところはあるが、性格はまったくと言っていいほど反対だった。
 この異母弟は、とにかく不真面目で遊ぶことしか考えておらず、加えて女好きと、手のつけられない放蕩王子なのである。
 それもこれも王妃が甘やかして育てたからだろうが、もう小さな子どもではないのだから、そろそろその責任を自覚してくれないだろうかとリオネルは常々思っていた。