「一族の恥」と呼ばれた令嬢。この度めでたく捨てられたので、辺境で自由に暮らします ~実は私が聖女なんですが、セカンドライフを楽しんでいるのでお構いなく~

 リオネルはゆっくりと瞼を閉じた。
 瞼の裏には、ひとりの女性の姿が映る。
 母亡き後、なにかと気にかけ面倒を見てくれた大叔母シャルリーヌの姿だ。
 およそ二年前に他界したシャルリーヌを思い出した途端、リオネルの脳裏に、会ったことはないもうひとりの女性の存在がよぎった。
「……わかりました。ただし、条件をひとつ呑んでいただきたい」
「なにかしら?」
 リオネルに条件と言われて、アルレットの声が尖る。
 けれども、リオネルは王妃の機嫌の降下に気付かないふりをして続けた。
「領地を得たのですから、この機に結婚したく思います」
 シャプドレーヌ公爵家のブランシュを妻に、と。
 社交界には伏せられているブランシュの秘密も、アルレットは知っているだろう。
 断られるはずがないというリオネルの予想通り、王妃は鷹揚に頷いた。
「いいでしょう。ただし、自分で話をつけなさい」