「ではもう一度言いましょう。あなたに領地を与えると言ったのです。この国はわたくしの息子リュカが継ぐのですから、いずれ貴方は臣下に下る予定だったでしょう? 少し早いけれど、あなたももうじき二十一。そろそろ頃合いではないかしら。だからね、エスポワールをあなたにあげるわ」
「…………」
さすがに、リオネルは言葉を失った。
エスポワールは絶望の地。大地は枯れて実りもなく、人々が日々の暮らしにも困窮する場所。
(……そう来たか)
父が病に伏してから、リオネルは父を見舞っていない。アルレットに妨害されて父の様子を見に行くことすらできなかったからだ。
だが、一週間経っても回復の兆しがないこと、そしてアルレットがこのような身勝手な決定を下したことを鑑みるに、父の病状はあまりよろしくないのだろう。
(リュカの王位継承の地盤を作るために、本格的に動きだしたということか)
まずは邪魔なリオネルを遠くに。しかも、どうあがいたってよくなるはずもない領地を与える。それから折を見て、与えた領地の状況が改善しないのを問題にして無能だと処断し、なにかと付随する理由を丁稚あげて、追放なり投獄なり処刑なりをするつもりだろう。
「すでに会議も通しました。あなたは今日からエスポワール公爵を名乗りなさい」
いつの間に会議をしたのかは知らないが、大方、会議とは名ばかりの強引な決定だったに違いない。
(退路は断たれているんだろうな)
これは断ることができないものだと、リオネルは瞬時に判断した。
ごねたらごねたで、それを理由に処断してくるだろう。国王が臥しているこの状況で、国をまとめる協力すらできないのかとかなんとか騒ぎ立てて。
「…………」
さすがに、リオネルは言葉を失った。
エスポワールは絶望の地。大地は枯れて実りもなく、人々が日々の暮らしにも困窮する場所。
(……そう来たか)
父が病に伏してから、リオネルは父を見舞っていない。アルレットに妨害されて父の様子を見に行くことすらできなかったからだ。
だが、一週間経っても回復の兆しがないこと、そしてアルレットがこのような身勝手な決定を下したことを鑑みるに、父の病状はあまりよろしくないのだろう。
(リュカの王位継承の地盤を作るために、本格的に動きだしたということか)
まずは邪魔なリオネルを遠くに。しかも、どうあがいたってよくなるはずもない領地を与える。それから折を見て、与えた領地の状況が改善しないのを問題にして無能だと処断し、なにかと付随する理由を丁稚あげて、追放なり投獄なり処刑なりをするつもりだろう。
「すでに会議も通しました。あなたは今日からエスポワール公爵を名乗りなさい」
いつの間に会議をしたのかは知らないが、大方、会議とは名ばかりの強引な決定だったに違いない。
(退路は断たれているんだろうな)
これは断ることができないものだと、リオネルは瞬時に判断した。
ごねたらごねたで、それを理由に処断してくるだろう。国王が臥しているこの状況で、国をまとめる協力すらできないのかとかなんとか騒ぎ立てて。



