「一族の恥」と呼ばれた令嬢。この度めでたく捨てられたので、辺境で自由に暮らします ~実は私が聖女なんですが、セカンドライフを楽しんでいるのでお構いなく~

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 父――バゼーヌ国の国王が倒れた時、リオネルの運命は決まったも同然だった。
 第一王子であるリオネルにとって、城の中はとても生きにくい場所だったけれど、それでもまだ父親という味方がひとりいるだけで違ったものだ。
 リオネルが十五歳の時に逝去した母は父の側妃で、子爵家出身だった。
 どういう経緯で父が側妃を娶(めと)ったのかは知らないが、側妃を娶るのに王妃の合意はなかったのだろう。
 母が王妃アルレットにつらく当たられていたことをリオネルは知っていたし、リオネル自身も疎まれているとわかっていた。
 王家の血を引く公爵家出身のアルレットの顔色をうかがう臣下たちは、リオネルを腫れ物扱いした。
 リオネルを少しでも重用するような動きがあれば王妃は目に見えて機嫌が悪くなったし、彼の味方をしようものなら、その者はどこか遠くへ左遷されたり、社交界でつまはじきにされたりした。
 父がリオネルをかばおうにも、なまじ権力のある公爵家出身の王妃を完全に抑え込むには至らず、彼の行動は逐一監視され、すべて王妃に筒抜けになっていたと言ってもいい。
 でも、それでもましだった。
 父が臥(ふ)し、一週間もしないうちに王妃に呼び出されたリオネルは、そのことを嫌というほど痛感して いた。