少し歩いてから、うしろを振り返る。


「どした? 早く行くぞ」


 芹沢は、ネコを抱いたままその場で固まっていた。

 いつも教室で見るようなふわふわした雰囲気は姿を消し、緊張で体をこわばらせ、今にも泣き出しそうな表情をしている。


「風間くん、一緒に……行ってくれるの? その、サッカー部……は?」

「ああ。今日は、グラウンドコンディションがアレだから休み。あー……一緒に行ったら迷惑だった?」

「う、ううん! そんなこと、全然……ありがとう」

 緊張したように引き結んでいた唇を少しだけほころばせると、パタパタと俺の方へと駆け寄ってきた。


 なんつーか、ネコがほっとけなかったっていうよりも、彼女自身が捨てられたネコみたいに見えて、なんだか放っておけなかった。


 俺が見つけた動物病院までの20分の道のりを、ぽつりぽつりと話しながら歩いていく。

 芹沢とこんなふうにしゃべったのは、多分これが初めてだ。