小雨が降る中、傘も差さず、途方に暮れたように道端で立ち尽くす女子が一人。

 チラッと横目で見ながら通りすぎようとして、俺は足を止めた。


「芹沢?」


 声を掛けた俺の方を、ビクッと肩を震わせて芹沢が振り返る。


「ネコ?」


 そう。芹沢は、雨に濡れたまま、なんだかぐったりした様子のネコを抱きかかえていた。


 首輪は……なさそうだ。野良猫か?

 よく見ると、前足から血が出ているみたいだ。


「病院……連れてかないと、この子……」

 芹沢が、震える声で言う。

「病院? ……ああ、今調べるから、ちょっと待ってな」

 差していた傘を彼女の方に差し伸べながら、ポケットからスマホを取り出し、手早く操作する。

「え……?」

「だから。病院。そいつ、連れていきたいんだろ?」

「う、うん」


 ここから一番近そうな動物病院の情報を調べる。


「うーん……一番近いとこでも、ちょっと距離ありそうだな。でもまあ、なんとか歩いていけるか。ほら、ここ」

 画面を芹沢に軽く見せると、俺はさっそく歩きだした。