「ほら」

「うん、ありがと」


 参道の脇のテントのところで参拝客に配っていた甘酒を受け取ると、少し奥まったところに置かれたベンチの方へと移動する。


「はぁ~、あったまるなぁ」

「ふふっ、ほんとだね」


 芹沢といるだけで、なんだか気持ちが丸くなるような気がする。

 幸せって、案外こういうことなのかな、なんて柄にもないことをぼんやりと考えてしまう。


「あのね。実はまた、ネコを飼い始めたの」

「へえ、そうなんだ」

「うん。ほら、あの保護してたネコが、無事に飼い主さんのところに戻ってから、やっぱりもう一回飼いたいねって話になって。それで、クリスマスに」

「ふうん。そっか、そっか」

「ほら、この子」


 甘酒のカップを脇に置いた芹沢が、スマホを取り出し画面を見せてくれる。

 まだほわほわした毛の、真っ白い子ネコが写っている。


「うわっ、めっちゃかわいいな。芹沢みた……ごめん、なんでもない」

 口を押えて、アツくなった顔をそらす。


 さすがにこれは直球すぎだろ。

 いやでも彼女なんだし、それくらい言ってもいいのか?

 でもさすがに『今度会いに行ってもいい?』って聞くのもアレだし、この場合なんて言うのが正解なんだよぉ~。


 そんなことを、ひとりで悶々と考えているうちに、なんだか頭がふわふわしてきた。