「この前、わたしが困ってるとき、声かけてくれて……助けてくれて……ありがとう。すごく、うれしかった。あのときのお礼、ちゃんと言えてなかったから」

「お、おう。全然。そんなこと」


 ……ちょっと待て。これ俺、フラれる感じか?


「そのときから、わたし————」

「え? 今、なんて言った?」


 おい、そこのクリスマスソング、今すぐ止まりやがれ!

 一番大事なとこ、全然聞こえなかったじゃねえか!


 俺が芹沢の口元に耳を寄せると、芹沢が、かぁっと頬を真っ赤に染める。


「ち、近いよ、風間くん……!」

「ご、ごめ……」


 芹沢の悲鳴に近い声が聞こえ、ぱっと距離を取ると、人差し指で自分の頬をかく。


「えっと……じゃあ、もう一回言うけどさ……俺と、付き合ってくれる? ……あ、ちょっと待った! ミーコに会いに行くっつーのは、連れ出す口実で。だからつまり、そういう付き合うじゃなくて……」

「はい」

「だから、男子と女子が付き合うっつーそういう意味で言ったのであって…………今、『はい』って言った?」

「き、聞き返さないで!」

 芹沢が、真っ赤な顔をそむける。

「いやでも、そこ、超大事だから」

「だからっ……よ、よろしくお願いします」

「お、おう。こちらこそ。……よろしく」

 お互いの目線が交錯すると、ふふっと自然と笑みがこぼれた。