はぁー、はぁー。
次から次へと神社の鳥居をくぐって石段を上っていく参拝客を横目に見つつ、手に真っ白い息を吹きかける。
「風間くん!」
俺の名を呼ぶ声の方に視線を向けると、パタパタと駆け寄ってくる、ちまっとした人影がひとつ。
うわっ。やべ。
芹沢、やっぱ小動物みたいで超カワイイ。
今すぐ抱きしめ……って、新年早々なに考えてんだよ、俺っ。
こういうときは、円周率を数えるといいんだっけ?
3.1415……あー、もうわかんね。
「ごめんね、遅くなって」
ぐるぐる巻きにしたマフラーの上から覗くほっぺたが赤く染まっている。
「いや。俺も今来たとこだし」
そう言いながら、視線がそっぽを向く。
……いや、だから。そんな態度取ったりしたら、怒ってるみたいに見えるだろって。
「そんじゃ、さっそく行くか」
「……うん」
目線もまともに合わせられないまま、他の参拝客同様、鳥居をくぐって石段を一歩一歩上っていく。