……ハッ!


 男性の10万円のお賽銭の理由を突き止めるはずだったのに、
いつの間にか話が脱線して、私ばかり話してしまっていた。

 目の前の男性をおずおずと見ると、
目を見開いて、私の目をガン見していた。

 
 あっ、ヤバい。

 
引かれた?
驚かせちゃった?
うざかった?
怒らせちゃった?


 男性の表情から、色々な可能性が頭に浮上する。

とりあえず、謝らないと!!

私は頭をバッと下げ、謝罪の言葉を一生懸命叫んだ。



この男性には嫌われたくない。



なぜか、そう思う自分がいた。


「あの、すいませんでした!!」

「は?」

「私ばっかり話してしまって!
 信じてない神の話を聞かされても、
 迷惑なだけですよね……⁉︎
 本当にごめんなさい!」

「あの、ちょっ」

「すいません!
 すいません!!」

「……っ!
 み、巫女さん!!」


男性に名を呼ばれてふと顔を上げる。


そして、男性の表情を見て、本当にびっくりした。


「その、ち、近い……、です…。
 離れて……。//」


さっきまでのクールな顔はどこへやら。

照れた様子で目線を逸らし、両手で顔を隠している。
見ると、耳まで赤くなっている。

そういえば、敬語も初めて聞いた。


「……、えっ!」


 不意を突かれ、こっちまで赤くなる。
だって、こんな表情見せるなんて、聞いてない、聞いてない!


「あの、す、すいません。
 俺もう行きますね。
「……、い、色々とお話しが聞けて、その……、
 神の存在について考えさせられました。
 あ、ありがとうございました……!
 じゃあ、また!」

 そう言うと、男性はバッと立ち上がり、
光の速さで駆けていってしまった。

 
「……えっ……!!」


 お、お礼言ってくれた……⁉︎
しかも、最後の「また」って何⁉︎

また神社に来てくれるってこと……⁉︎


 また不意を突かれた私は、
しばらくそこで呆然と立っていることしかできなかった。

 顔に当たる風が、やけに冷たく感じて、心地よかったのは、
どうしてだろう?


ーー