僕に依存してほしい。【ピュアBL】

「怜くんって、スマホ大好きだよね?」

「そっか? 普通だけど」

 怜くんは歩きながらスマホを手に持ち、チラッと覗いていた。

 怜くんは、僕とスマホどっちかしか持てない?としたらどっちを選ぶんだろう。スマホを選んだ怜くんを想像したら胸が痛くなってきた。

「はぁ……」

 あ、いけない。ため息を外に出しちゃった。怜くんに聞かれてないといいな。ため息は幸せを逃すって言われているけれど別のところでは気持ちをスッキリさせるみたいな話も聞いたことがある。

 今、ちょっとだけスッキリとした気がした。

「ちょっと用事があるから、僕はここを曲がるね」
「用事って、何?」

 怜くんはこっちを見た。

 本当は、用事なんてないよ。暖かい家に帰って、ストーブの前でぬくぬくしたいよ。

 だけどそんな嘘をつきたい時だってあるさ。僕のことを気にしてくれない怜くんには教えてあげない。

「内緒」
「はっ? 何それ……どこに行くんだよ」

 ムッとした顔をした怜くん。
 ちょっと予想外だったけれど、気にしてくれたのかな? 嬉しい。

「バイバイ、またね!」

 そう言って僕は怜くんに背中を向けて、家とは反対方向に向かって歩いた。 

 ちらりと後ろを振り向くと、怜くんが立ち止まりじっとこっちを見ていた。再び前を向き、目的地はなかったから、なんとなく目の前に見えてきた小さな本屋に入った。