結局放課後まで連絡はなかった。
私はもうそれは灰のように教室を出た。
円は部活に行っちゃった。
1人で帰るか。
いや、基本いつも1人なんだけどさ。
こたくんは誰と帰るのかな。
そんなことを考えながら、下駄箱について上履きとローファーを履き替える。
西陽の差す茜色の廊下に、細長い影が落ちて顔を上げれば
「わっ、こたくん…っ!」
こたくんの姿。
「帰ろ。」
…まだ少し不機嫌そうだけど、帰ろうと誘ってくれた事実が嬉しくてホッとした。
「ぶ、部活休みなんだよね?」
なんか、いつも一緒にいるのに緊張してしまう。
「うん。松前先輩に誘われなかったんだ?」
また松前くんのこと…
松前くんに誘われたことなんて一度もないのに。
「…誘われないよ。」
「あっそ」
また不機嫌に顔を逸らされてしまう。
ぎゅっと胸が狭くなる。
…どうしてそんな顔をするの?



