「え……うん、」
仲がいいってほどじゃないけど…松前くんはみんなと仲良いし。
「そうやっていつも話してんだ?」
鋭い視線に喉が熱くなる。
こんな刺さるような眼差しを向けられるのは初めてだ。
「まあそれなりに話したりするけど…」
「近すぎんだろ」
うんと低い声に、身が震えた。
どうしてそんなに怒ってるの?
「それは事情があって、」
「なに?」
必死に理由を話そうとするけど、円の顔が頭をよぎった。
ダメダメ。言えない。いくらこたくんでも言えない。
「それは言えないけど…」
「ムカつく。」
さらに怒りを露わにしたこたくんは、私の知ってる可愛くて爽やかな王子様こたくんじゃない。
「なんで、」
そんなに怒ってるの?って聞こうとしたとき、被せるようなこたくんの言葉
「あんなんキスできそうな距離じゃん。」
イライラしてるってわかりやすい表情
「琥太郎何してんだよ!早く行かないと怒られるぞ!」
廊下の方からこたくんの同級生が呼ぶ声が聞こえてくる。
「すぐ行く!…じゃ」
大きな声で返事をして、エナメルのバックを片手に部活に行ってしまったこたくん。
…あれは、なんだったの?



