「せれねぇ」
いつもより少し低い声で呼び止められる
その表情はやっぱり怒ってる。
「…こたくん?どうしたの?」
ずっと俯いて、こたくんらしくない。
「じゃあ俺部活行くわ。琥太郎も早くこいよ」
異様な雰囲気を察してか、松前くんは私たちに手を振る。
「はい。」
こたくんにしては覇気のない返事。
こたくんだって早く部活行かないといけないのに、いいのかな?
周りは視聴覚室から出ていくのに、ずっと黙り込むこたくん。
「…どうしたの?」
「……」
そう聞いたって、うんともすんとも言わないんだもん。
「どこか痛いの?」
もしかして、体調悪いとか?
それなら私より松前くんに行った方がいいよね?部活休ませてもらった方がいいと思うし。
「松前先輩とやけに仲良いね。」
やっと話したと思えば、松前くんのこと。
私を見つめるこたくんはどこか苦しそう。



