冷酷執事の甘くて危険な溺愛事情



残された埜夜くんがひとり、こんなことをつぶやいていたのは、わたしの耳に届くことはないまま。


* * *


「あっ、埜夜くん目覚めた?」

「……なんでゆずがここにいんの」


「埜夜くんの看病をしようと思って!」

「なにこれ……デジャヴ?」


そう、じつはあれから数時間後。

お昼ごはんを食べて薬を飲んだあと、しばらく寝ていた埜夜くん。


「やっぱり埜夜くんが心配でね、おかゆ作ってきたの」

どうしても埜夜くんの役に立ちたくて。


「食欲あるかな? ひとりで食べられる?」


ついでに体温を測ると、まだ微熱っぽい。


「ゆずが食べさせてくれんの?」

「う、うん!」


おかゆをお椀によそって、ひと口分をれんげですくった。


このままだと熱くて火傷しちゃうかな。