「埜夜くんと離れたくない……よ」

「それは執事として?」


「ち、違う……。埜夜くんだから、離れたくないの」


埜夜くんの手にそっと触れて、自分からギュッと抱きついた。


「俺そんなこと言われたら期待するんだけど」

「……っ?」


「ゆずも俺と同じ気持ちなんじゃないかって」


もっと強く抱きしめ返してくれる。

わたしはやっぱり、この温もりが落ち着くし、離れるなんて考えられない。


「埜夜くんは、わたしにとって特別……だよ」


気づいたの。

この特別はきっと――わたしが埜夜くんを好きだから。


ひとりの男の子として、埜夜くんに惹かれてるんだ。


ただこの気持ちを、いま言葉にしていいのかわからない。


いちばん怖いのは、気持ちを伝えたことで今の関係が壊れてしまうこと。


埜夜くんのそばにいられなくなるのは嫌だ。


だから――。


「埜夜くんになら、何されてもいいって思える……の」


このひと言がまさか……埜夜くんの甘くて危険な溺愛の引き金になるなんて。