第2話

アパートに帰り、達也は昔の写真を探した。
そういえば、こっちには持ってこなかったな、自宅だな、週末に帰ったとき探そう。 
    
翌日、達也は仕事終わりに、百合の店に行こうと思った。

食事がとても美味しいこともあるが、百合に会いたい気持ちが大きかった。

連日お店に行くと、この気持ちに気付かれたら嫌だな。まして、あのチラシ配りにそう思われることは心外だ。
店の近くで迷っていた。

「あれ、昨日のお兄さんじゃないですか」
あ、しまった、コイツに見つかってしまった。

「今日もぜひ来てください!」
また元気に言われた。

「よく俺のこと覚えてたね」
「お客さんはうちの店の初めてのお客さんですよ、忘れるわけないじゃないですか」

相変わらず、コイツ調子がいいな、でも、コイツに誘われたからお店に行ける理由がたつな。

「席、空いてるかな」
「大丈夫ですよ」
 
今日も一番乗りだった。

「いらっしゃいませ」百合の声だ。

「あら、こんにちは、今日もいらしてくれてありがとうございます」
俺のことを覚えていてくれた。

それだけで、素直に嬉しい気持ちになり、一日の疲れが飛んだ。

達也は、カウンターに座った。
「今日のオススメをください」

言ってから気がついた、そんなメニューはないんだ。
「はい、分かりました、少しお待ちくださいね」

「あれ、オススメなんかあったっけ?」
振り返ると、チラシ配りがいた。

あ、コイツ、余計なことを言いやがって。

「オススメは今日から入れたのよ、メニュー表には載せてないけどね」
百合は達也に目配せをした。

達也は小さな秘密を共有し、天に上がるような気分だった。

そして、会計は百合がしてくれた。
「お客さん、また、『オススメ』食べにきてくださいね」
百合は優しく微笑みながら言った。

店を出たら、あちらにチラシ配りがいた。達也は見つからないように脇を通って行こうとした。

「あ、お客さん、また来てくださいね!」
しまった、見つかった。

「時間があったらな」
達也はぶっきらぼうに応えた。