クッションを投げられている最中に、私はやっと分かった。




ーーあぁ、今のお母さんはやっぱり、自分の事と潤の事しか頭になかったんだ……。




怜音先生の言うとおり、本音で話してみないと人はどう考えてるなんて分からないってのは本当だったんだな………。





「いいよ……もういいよっ!!!」





叫ぶと、お母さんの持つクッションがピタリと止まる。




「もういいって、霞……でも、貴方が嘘付いてるようにしかーー「本当だから!!!小学校の頃からずっとーー!!!信じないなら、私は出てゆくから!!!」」



私は母の顔も、潤の顔も思い出したくない気持ちになって、キャリアケースを掻っ攫って家を飛び出した。




家出したのは、今日が初めてかもしれない。