「もう、要件はいいでしょ?ちょっと1人にさせて。今、いっぱいいっぱいなの」
彼の手を振り払い、手持ちの冷凍うどんを手に持つ。
まったく幼稚園の物心ついた頃、父親が亡くならなければこんなやっとも出会わなかったのに。
運命というものは残酷だ。
パシンーーッという音が、部屋の中で反響する。
潤が私を平手打ちした、結果だ。
反射的にうどんの入った器も、粉々に割れてしまった。
「おやおや、偉そうに言ってくれるじゃないか……誰のお陰でこの家に住めると思ってるの?霞ちゃんが小学生の頃から家計を支えているのは僕だってのに!!」
どうせその次は「反抗するってなら霞ちゃんとの体の関係を持っている事を、お母さんに知られたら、どんなに悲しむだろうね!!」でしょ?
床に倒れていた私の胸元を掴んで、今にも殴られそうな危機的状況から、潤はグッとこらえたのか私を地面に叩き落とす。
ヌメヌメとした冷凍うどんの汁が、髪の毛にベットリと纏わりつく。
私がまだ小学校3年生ぐらいだった頃に、潤とお母さんは仕事場で出会った。
お母さんは潤の事を、「良くしてくれているお兄さん的で、優しい紳士様」というのが第一印象らしい。
裏ではお母さんが見えないところで、娘を搾取する悪徳ロリコンだってことを知らずに未だに付き合っているのだ。
半分泣きそうになりながらも、散らかった冷凍うどんを片付けるべく机の上にあった、タオルを掴み床を拭く。
なんでこんな目に私が、合わなければならないの?
誰も助けてくれずに、生きている私の価値って何?
叫び出したい胸の内を隠しながら、床を拭いていると風呂場に向かっていたのか潤がリビングに戻ってきた。
「来るんだ。反抗してしまった罰としてお仕置きだ」
無理やりと言っても過言でもない様子で、力ずくで私を風呂場まで引っ張った。
手首を全力で掴まれ、反抗しないようにと髪まで掴まれてしまった私の精神は徐々にすり減ってゆく。
その後の行為を知っているからだ。
「脱いで……脱ぐんだ!!今目の前で」
風呂場の洗面台、二人きりの密室で潤はそういった。
吐息が粗く浮ついた笑みはきっと、私を罰するために、脱げという命令をしていないのだろう。
ーー仕方ない事だから……我慢して。私。