ガンガンと痛みが響く頭を抱え、恐る恐る掛け布団を持ち上げる。
……うわっ、最悪。
見事に二人とも下着姿だった。
ベッドの周りを見回しても、着ていた服は見当たらない。
もしかしたら彼とそういう雰囲気になって今に至るのだとしたら、ベッドの周りに衣服が脱ぎ散らかっていそうなものだ。
それがない。
だとすると、どういう状況?
二日酔いの頭では、考えを纏めることも一苦労。
とにかく、暫くお酒を飲むのは控えよう。
それに何か着ないと…。
気持ちよさそうに眠る彼を起こさないように、ゆっくりとベッドから出ようとした、その時。
「逃げる気か?」
「ッ?!」
寝ていると思っていた彼に腕を掴まれた。
思わず振り返り、視線が交わる。
「今日、休みだろ?もう少し寝ときなよ」
「っ……」
肌掛け布団から出ている肌が目に毒なほど色気があって、思わず視線を逸らしてしまった。
というよりも、完全に下着姿を見られてしまっている。
すかさず布団を手繰り寄せ、胸元を隠す。
「フッ、今更だろ」
「っっ」
「まさか、覚えてないのか?」
「……すみません」
やっぱり、そうなの?
何をどうしたらそんな雰囲気になるのよ。
上半身を起こした彼は艶めかしい裸体を惜しげもなく披露し、不敵に微笑んだ。
「コレ、付けたのも覚えてない?」
「……ッ?!!!」
いい歳した大人の男女が一晩ベッドで過ごしたという事実から想像した『コレ』とは、昂る感情に身を任せ、快楽を求めた二人に起こり得る行為の一つだと思ったのだが。
夕映の視線の先に映ったそれは、首筋に残る痛々しい歯形の痕。
「……私が?」
「他に誰がいるんだよ」



