白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


「三年前だったか、夕映さん、都の救急医療計画の提案書をあげていたよね。君の目指す救急医療は、采人が何年も前からずっと思い描いてる将来図そのものでね。私も若い頃から第一線で医療に携わって来たから、少しでも孫のために何かしてやりたくて」
「それで総合救急医療を…」
「ん。この歳になると、長時間現場に立つことは無理だけれど、基盤を整えるくらいは出来るからね」

事前に刷り込んでおいた情報の二つ目。
彼女が三年前に、東京都の救急医療に関する意見書のような提案論文を提出していた。
都立病院に勤務して気付いたことを、現場の目線で描く医療事情だ。

都からの監修要請を受けていた祖父は、毎年のようにそれらの論文を目にしている。
祖父に言われ、数年前からその論文を目にしている俺は、『夕映』という名前にピンと来ていた。

論文の内容が、『総合救急医療』という着眼点もさることながら、ドクターカーの普及を提案するもので。
都の予算具合からして、ドクターヘリを急増させることは困難。
ヘリポートの確保も厳しい中、ドクターカーは救急車を改良することで実現できる。

問題は派遣される医師が不足していることだ。
救急専門医が中々増えない中、年々救急車の出動回数は増える一方。
病院施設への負担を軽減させる目的も兼ね、救急専門医の定期的研修制度を掲げている内容。
あらゆる面において、具体的な案と対処法が記されていたのだ。

それを昨夜、改めて祖父母に話した。
神坂総合病院(うち)が目指す総合救急医療の形が、まさに彼女の目指している医療の姿なのだと。


医療(仕事)に対して誇りを持っている彼女だからこそ、俺の伴侶として相応しい。
俺が初めて祖父母に頭を下げてまで、手に入れたいと思った女性だから。