現病院長である祖父と、医療に関しての話に花が咲く。
仕事に誇りを持っている彼女だから、自然と会話が成り立っていて、俺の狙い通り、祖父母の彼女に対する印象もかなりいい。
「ここだけの話、五年か計画で『総合救急医療』を目指しているんだよ」
「えっ…」
「実際、既に取り入れている病院はあるけれど、規模的にうちの方が余裕があるからね。そう遠くない未来に実現するよ」
「本当ですか?!さすが、神坂総合病院!最新の医療機器を導入されているだけでも羨ましいのに…」
「じゃあ、うちに来たらいい」
「へ?」
「即戦力は魅力的だね。うちなら、今の倍は出せると思うよ?」
「ッ?!!」
事前に刷り込んでおいた情報の一つ。
都立病院の勤務医の月給事情だ。
非公務員の勤務医の月給は、医師免許取得後五年目で約五十五万円。
大卒のOLに比べたら遥かに多いが、開業医に比べたら断然安い。
俺ではなく、祖父からの一声は大きいだろう。
いずれは結婚し、うちの病院に勤務して貰うつもりだが、出来ることなら今すぐにでもヘッドハンティングしたいくらいだ。
常に目の届く距離に置いておきたい。
あの男みたいな、ろくでもない男に騙されないように。
祖父母に『会わせたい女性がいる』と伝えたのは、医師としてだけでなく、結婚したい女性だと話してある。
今婚約している彼女は、母親に勧められたから仕方なく婚約した相手。
『どちらかに結婚したい人が見つかったら、婚約を解消する』と、相手側も承知している。
というよりも、婚約者の彼女から一年前にそう提案されたのだから。
だから、結婚したい人ができた時点で、今の婚約は解消されることとなる。
―――夕映はまだ知る由もないが。



