白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです

(采人視点)

一週間ほど前に、彼女のご両親と対面した。

年頃の娘の恋人として挨拶したにもかかわらず、威圧されるどころか。
『結婚』に向けて、全面協力します!的な雰囲気に、サマージャンボ宝くじで一等を引き当てた気がした。
交際して何年も挨拶もせずにいた恋人という設定だから、あからさまに嫌がられると思っていたのに。

渡りに船。
思いがけない幸運を引き寄せた俺は、すぐさま行動に移すことにした。
この好機を逃がす手はない。

彼女のご両親から送られて来た手打ちうどんの御礼に、入手困難な銘酒を取り寄せ、期間限定・数量限定の銘菓を手配し、それを送った。
何年も付き合っていると思われている以上、結婚を意識させるのは絶好の機会だ。

舌の肥えている祖父母にも、彼女のご両親が作ったうどんを食して貰った。
『コシがあって、喉ごしが滑らかで旨い』と大好評。
けれど、うどんはあくまでも口実に過ぎない。
彼女との関係を築くための布石だ。

祖父母との会食は彼女にしてみれば騙し打ちのような形にはなったが、彼女との将来を考える上で祖父母の了承は避けては通れない。
だから後回しにはせずに、早い段階で祖父母の了承を得たかったのだ。

神坂家にとって、父母の意向よりも祖父母の了承が結婚の鍵となるからだ。



幻の豚と呼ばれる『梅山豚(メイシャントン)』。
日本に百頭しかいない希少品種。
蕩けるように柔らかく、甘みがあるのにあっさりしている味。

目の前の囲炉裏で炭火焼きにされる梅山豚に、隣りに座る彼女の緊張も解れたようだ。

「夕映さんも医師をされていらっしゃるとか…?」
「はい。都立江南病院で救急医をしております」
「江南病院と言ったら、ER型だったかな?」
「はい」
「うちは三次救急だけれど、場合によって一次や二次も受け入れてるよな?」
「ん。『断らない』がモットーだしね」