*
「長野、残念だったな」
「次は絶対負けないんで!」
「いつでも受けて立つよ」
軍配は夕映に上がった。
長台車に積まれていた薬剤は、見た目こそ大きいが、中身は輸液が殆ど。
手にした重さはあれど、数的には細かい薬剤よりは遥かに補充しやすい。
経験値と知識量が軍配の鍵となった。
「では、お先に失礼します」
「お疲れ~」
「黒瀬先生、お疲れ様でした」
「お先に」
戸部医師と日勤の看護師(渡辺さん)に挨拶し、更衣室へと向かう。
早番は六時出勤ということもあり、退勤時間は十五時半。
急患がなければ、夕方の帰宅ラッシュに巻き込まれることもない。
着替えを終えた夕映は、ロッカーからスマホを取り出す。
仕事中は院内用のスマホを持ち歩いているため、自身のスマホはロッカーの中なのだ。
「ん?」
神坂医師から不在着信四件。
普段はメールのやり取りしかしていないため、着信の表示に若干戸惑う。
『今、仕事が終わりました。何か、御用ですか?』
一週間ほど前の突然の両親上京で、彼との関係性が微妙に変化しつつある。
両親の前では『仮初の恋人』という関係性。
とりわけ、何か条件を突き付けられたわけではないが、何となくぎこちない空気感がある。
ピリリリリッ。
「はい、もしもし」
「悪いね、仕事上がりのところ」
「いえ、大丈夫です」
「今夜、少し時間貰えるかな」
「今夜ですか?」
「うん、夕食でもどう?」
「……」
スマホのスピーカー越しに聴こえてくる落ち着いた美声にドキッとしてしまう。
サラッと違和感なく食事に誘われ、一つ返事に『はい』と答えそうになった。
「浮気ですか?」
「え?」
「長野、残念だったな」
「次は絶対負けないんで!」
「いつでも受けて立つよ」
軍配は夕映に上がった。
長台車に積まれていた薬剤は、見た目こそ大きいが、中身は輸液が殆ど。
手にした重さはあれど、数的には細かい薬剤よりは遥かに補充しやすい。
経験値と知識量が軍配の鍵となった。
「では、お先に失礼します」
「お疲れ~」
「黒瀬先生、お疲れ様でした」
「お先に」
戸部医師と日勤の看護師(渡辺さん)に挨拶し、更衣室へと向かう。
早番は六時出勤ということもあり、退勤時間は十五時半。
急患がなければ、夕方の帰宅ラッシュに巻き込まれることもない。
着替えを終えた夕映は、ロッカーからスマホを取り出す。
仕事中は院内用のスマホを持ち歩いているため、自身のスマホはロッカーの中なのだ。
「ん?」
神坂医師から不在着信四件。
普段はメールのやり取りしかしていないため、着信の表示に若干戸惑う。
『今、仕事が終わりました。何か、御用ですか?』
一週間ほど前の突然の両親上京で、彼との関係性が微妙に変化しつつある。
両親の前では『仮初の恋人』という関係性。
とりわけ、何か条件を突き付けられたわけではないが、何となくぎこちない空気感がある。
ピリリリリッ。
「はい、もしもし」
「悪いね、仕事上がりのところ」
「いえ、大丈夫です」
「今夜、少し時間貰えるかな」
「今夜ですか?」
「うん、夕食でもどう?」
「……」
スマホのスピーカー越しに聴こえてくる落ち着いた美声にドキッとしてしまう。
サラッと違和感なく食事に誘われ、一つ返事に『はい』と答えそうになった。
「浮気ですか?」
「え?」



