白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


彼女の実家が老舗のうどん屋だと知り、彼女のご両親が手打ちしたうどんを夕食に頂いた。
生まれて初めて食べる水沢うどんだったが、あまりの衝撃的な美味しさに、今まで食べてきたうどんが、もはやうどんではないと思えた。

「ご両親のうどん、本当に凄く美味しかったよ」
「そう言って貰えると嬉しいです」
「いや、あれはマジで衝撃的だよ。出前が取れるなら週三くらいで頼みたいくらい」
「フフフッ、さすがにそれは大袈裟な」
「いや、冗談抜きで。うちの病院の蕎麦も結構上手いけど、コシや喉ごしが全くの別物だよ」
「そりゃあ、うどんと蕎麦じゃ違いますよ」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「あらあら、親の目盗んでイチャイチャだなんて、若いわねぇ~」
「お母さんっ!!」
「いいのよ~気にしないでチュッチュしてちょーだい。お母さん達はぜ~んぜん、気にしてないから♪むしろ、ラブラブしててくれた方が安心するわ」

食後のデザートに俺が買って来たケーキを出すことになり、キッチンで用意していると、ダイニングテーブルを拭き終わった彼女の母親が布巾を手にして現れた。

上機嫌で父親がいるリビングへと向かう母親。
夕映からはとめどない溜息が漏れ出した。

「すみません。うちの両親に元彼と別れたこと言ってなくて」
「別に話す必要ないだろ」
「……そうかもしれないですけど、神坂さんのことを完全にその彼氏だと思い込んでて」
「別に、いいんじゃない?」
「……へ?」
「俺は全然構わないよ」
「……」

ロールケーキをカットする夕映の手が止まる。

食器戸棚からケーキ皿を取り出し、引き出しからフォークを取り出す采人。
予想通りの反応を示す夕映を視界に捉えながら、思いがけない展開に内心笑いが止まらない。