白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです

(采人視点)

彼女の笑顔を初めて見た。

彼女が作ってくれたラーメンを完食したのが、意外だったようで。
クスクスと無邪気に笑う姿にきゅんとする。

もっと色んな顔が見てみたい。

切なそうに儚げな表情を見せたり。
恥ずかしさで頬を赤らめたり。
真剣な顔つきで向き合う姿だとか。
こんな風にあどけない隙を見せてくれるのも、心が揺さぶられる。

あの男が知ってる顔だけでなく、俺だけが知る彼女がもっと欲しい。


聞かれたから答えたけれど。
俺に『婚約者』がいると知って、君はどう思う?

一瞬驚いたような表情を浮かべたが、所詮『他人の男』という認識だろう。
御曹司ならば、いて当然的な。
だから、あえて隠さずに教えたんだ。

恋人に裏切られ傷ついている君が、心を封鎖するどころか。
『他人の男』でも手に入れたくなるように。

『愛して欲しい』と潜在的に刻まれている傷を癒すのは、その傷を覆うほどの『愛』でしかない。

あーなりたいなりたい。
こーなりたいなりたい。

医師が、縫合がもっと素早く綺麗に縫えるようになりたいというのも、努力して、自分で(自信を)得る以外に無いから。

俺が注ぐ愛で、『愛される』自信をつけろ。
あいつに抉られた傷なんて、傷があることさえ思い出せないほどに。
この俺が愛し尽くしてやるから。

「夜勤明けのところ、遅くまで悪かったね」
「いえ。フルーツ、ありがとうございました」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」

ダイニングから玄関へと向かう。
見送ろうと俺の後を追って来る彼女の気配を背に感じながら…。

君の口から『もう帰るの?』と聞けるようになるには、あと何回通えばいいだろうか。
―――早く俺を引き止めるようになれ。