白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


「それじゃあ、いただきます」

全裸を見られただなんて思いもしないほど、フランクな彼の態度に拍子抜けする。
彼にとったら私の裸だなんて、見ても何ともないのだろう。

「んっ、旨い!ラーメンに豆腐?とか思ったけど、これ、アリだな」
「スンドゥブという韓国の豆腐鍋なんですけど、良質なたんぱく質が摂取できるのでお勧めです」

彼の前にお水の入ったコップを置く。
箸が進むようでよかった。

「あっ、そうだ」

彼は思い出したようにジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出し、一枚の名刺を私の前に置いた。

「電話で言ってたお金の件だけど、この弁護士に相談するといい。用件はメール済みだから、神坂から紹介して貰ったと言えばいいから」
「……すみません、ありがとうございます」
「これまでの送金していた証拠だとか色々揃えるものはあるみたいだけど、泣き寝入りするよりはいいと思うから」
「……はい。何から何までありがとうございます」
「一つ、質問していい?」
「あ、はい」

彼は真っすぐ私を見据えた。

「彼のこと、……愛してた?」
「………」

愛してた?……か。
もう過去の出来事なのだと、改めて痛感する。

「難しい質問ですね。……あの日までは愛してると思ってたんですけど、今思うと、愛されたかっただけなのかも」

幼い頃から救急医を目指していて、ずっと勉強に打ち込んで来た。
真子たちと遊ぶことが唯一の楽しみだった私に、初めてできた彼氏。
何もかもが初めてだったから、彼が全てだったように思う。

だけど、救急医として過ごして来た時間が私を救ってくれた。