白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


開いた口が塞がらないというのは、こういう時のことを言うのだろう。

お祖父様の話では、既に江南病院の院長と話がついていて、年度末の三月末日をもって退職扱いになるという。
そして、四月一日付で神坂総合病院のER室チーフの肩書で勤務することになっているのだとか。
しかも、病院内には三月中旬頃の人事異動の辞令交付の際に私のことも発表されるそうだ。
それはすなわち、采人さんの妻であり、神坂の嫁が勤務することが公になる。

三週間ほど前にあった、医師会の忘年会で江南病院の院長と顔を合わせたお祖父様が先手を打った。
入籍を機に一気に話を進めたいという彼のたっての希望を叶える形になったというのが種明かし。

そんなこととはつゆ知らず。
私の知らない所で、私の人生が大きく変わろうとしている。

一週間ほど前に、ドラマのような流れで入籍したばかりだというのに。
一難去ってまた一難。
人生のステップアップは、思ってた以上に刺激的だ。

もしかして、戸部先生は院長から聞いていたのでは?
だから、昨日あんなことを言ったのかもしれない。

普段はおちゃらけている先生が、いつになくしんみりと諭すように話すから。
結婚した私への励ましかと思っていたけれど、弟子を送り出す贐だったのかもしれない。

「夕映、黙っててごめんな」
「……」

彼と結婚すると決めた時に、いずれは今の職場を辞めるのだと納得した。
それが、あと三カ月とカウントダウンが始まったというだけだ。

「分かりました。……今聞いたばかりで、正直まだ気持ちの整理がつかないのですが、いずれは神坂病院で働くことは分かっていたので、引継ぎも含めて職場の上司に話します」

私が神坂で働くのは、あなたのためじゃない。
私自身の選択よ……。