「ここでは……」
さすがに初めてがリビングのソファってのもね。
別に処女というわけでもないけれど、経験が少ないからこそ、ロマンティックな夜を夢見てもいいよね?
「しっかり掴まってろ」
軽々と抱き上げる彼。
こういうことにも慣れているのかな。
前にも酔った時に運んで貰ったっけ。
彼から仄かに香るホワイトムスクの香り。
すっかり記憶されているそれは、夕映の鼓動を速める媚薬のようで。
彼の寝室のベッドにそっと下ろされる。
怖くないわけじゃない。
でも、彼の腕の中なら、きっと大丈夫。
そう思える自分が、少しだけ誇らしかった。
薄暗い部屋の中で、二人の吐息と衣擦れの音が僅かに響く。
本当はシャワーを浴びたい。
初めての時くらい、いい香りを纏う女でいたいのに。
「シャワー浴びたらダメですか?」
「俺を焦らす気か?」
「ふぇっ…?」
「何か月もお預け喰らってんだから、観念しろ」
「っっっ」
ジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイを解き、Yシャツのボタンを外しながらキスして来る彼。
“もう待てない”とばかりに、貪るような淫らな口づけ。
元彼とのキスなんて、子犬に舐められたくらいのものなんだと思い知らされるほど。
彼とのキスは濃厚でとても熱く、そして愛されていると感じられる。
激しいキスは次第に緩急をつけるように甘く蕩けて。
私からの反応を楽しんでいるかのように、煽って来る。
アンサンブルのニットとロングスカート、カラータイツも脱がされて。
辛うじて大事な部分は隠れているはずなのに、彼の色欲を孕んだ視線の前では、全てが見透かされているようで。
こんなにも緊張したことがあっただろうか。
恋愛に疎く自信がなかったせいか、自分の性に対して、軽視していたかもしれない。
自分から求めることはなく、求められれば応えるのが当たり前だと。
指先に口づけし、膝頭にも優しくキスを落とす彼。
私の全てを大事に扱ってくれている。
初めてが、彼だったらよかったのに。



