白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです


「えっ……まさかとは思いますけど、今日の今日に提出する気じゃありませんよね?」
「そのまさかだけど」
「……」

区役所の駐車場に車を止め、三時間ほど前に彼女が記入した婚姻届と必要書類が入った封筒を手にする。

「あっ、ちょっと待ってて」
「え?」

後部座席から大きな紙手提げを取り出し、助手席に回る。
ドアを開け、夕映に紙手提げから取り出したものを差し出した。

「俺からのクリスマスプレゼント」
「えっ……コートですか?」
「ん。アクセサリーをプレゼントしても着けてくれなそうだから、こういう実用的なものの方がいいかと思って」
「……ありがとうございます」
「着てみ」

助手席から降りた彼女は、着ているハーフコートを脱ぐ。
そんな彼女の肩にそっとコートをかけた。

「こういう大人っぽいデザインのコート欲しかったんです。それに、手触りが凄くいいですね」
「気に入って貰えたのならよかった」

しんしんと降り積もる雪。
雪に濡れないように傘を差す。

「私からのプレゼントは、家に帰ってからでもいいですか?」
「ん。とりあえず、寒いから出しに行って来よう」
「……はい」

止めるなら今だぞ。
心の中で一瞬そんなことが過った。

四方八方から囲い込んで、こうなるように仕向けたけれど。
『無理やり結婚させられた』だなんて言われたくないし、言わせたくない。

「夕映が言ったんだろ。『采人さんとずっと一緒にいられますように…』って」
「聞いてたんですか!?」
「聞いてたじゃなくて、聞こえたんだ」
「もうっ…」
「今から、叶えに行くぞ」
「…はい」
「いいんだな?」

これが最終通告だ。

「今出しておかないと、他の男性(ひと)と駆け落ちするかもしれませんよ?」
「ッ?!本当に面白い女だな、夕映は」