夕映とのツーショット写真で安心したのか。
則先生は休憩時間を終え、仕事へと戻って行った。
「神坂さんとは、どんなデートをしてるの?」
「デート?……買い物と食事くらいしかしてないよ」
「二人とも医師だから忙しいのは仕方ないにしても、ちゃんとデートくらいしなきゃ」
「……」
元彼とだって、デートらしいデートなんて数えたくらいしかしてない。
仕事優先の私には、異性と付き合うということ自体が難しいのかもしれない。
「私はERだけでてんてこ舞いだけど、彼はダブルボードで、今年から三つ目の研修に入ってるらしい。だから余裕がないのかも」
「ダブルボードって?」
「最低三年は専門医の研修を受けないと試験が受けれないんだけど、三十三歳で既に胸部外科医と脳外科医の資格を持ってるのよ。則先生は麻酔科医の資格を保有してるし、私は救急医の資格を持ってる」
「それって珍しいの?」
「長年医師をしてたら珍しくはないかな。内科医が小児科医の資格を持ってたり、消化器内科医の資格を持ってる人も結構いる。だけど、三十ちょっとの若さで超難関外科二つを持ってるのは、とんでもない天才としか思えない」
「神がかってる御曹司ねぇ。いることろにはいるんだね~」
真子お手製のアンチョビパスタを頬張る。
辛いもの好きな私のために作ってくれたようだ。
「腹黒な性格って、どう思う?」
「腹黒?……どうだろう。貶めるような腹黒さは問題だけど、好意があっての腹黒なら、私は大丈夫かな。相手に振り向いて欲しい態度の裏返しだったりするじゃない」
「……そうなの?」
「人気コミックの腹黒王子って、独占欲と溺愛が王道で売りじゃない」
言われてみれば、そうだ。
現実世界と切り離して考えすぎていたのかも…。



