これまでも、何度も甘いセリフを言われた。
最近まで口説き文句の常套句くらいにしか思えなかった。
けれど、こんなにも大怪我をしてまで私を守ってくれる人なんて、今までただの一人もいなかった。
五年も付き合った元彼でさえ、女性として扱われた記憶が無いに等しいことに今になって気付く。
「家もあるし、仕事もキャリアアップできるし、イケメンな旦那が手に入るよ」
「それ、自分で言います?」
「結構美形だと思うけど」
「……ウフフッ、ハイハイ、すっごくイケメンですよ」
冗談なのか、ナルシストなのか、分からない。
だけど、本当に美形なのだから、返しようがない。
「近未来で、一次から三次まで幅広い救急医療を勉強できるぞ?」
「んっ……それ、狡くないですか?」
「うちの病院の特権中の特権だからな」
美味しいなんて言葉では言い表せないくらい魅力的な提案だ。
それに、ダメ出しするような欠点が見当たらない。
少し度が過ぎる金銭感覚なのと、強引な性格はあるにせよ、他の部分で十分に相殺される。
いや、お釣りが出るくらいだ。
「もし、もしもですよ?」
「……ん」
「もし私が、……結婚を承諾するみたいなことを言ったら、どうなるんですか?」
「それって、既に心が揺れてるってことだよな」
「っ……」
直ぐのすぐに結婚とかは正直考えていない。
そりゃあ、直ぐにでも結婚したかったというのはあるけれど、元彼とのこともあって、今は少しインターバルを置きたいのが本音だ。
「直ぐに今の職場を辞めろとは言わないけど、うちで働くデメリットが思い浮かばない。将来的にという形でも構わないが、いずれはうちで働いて貰えれば」



