彼女の回答に驚いた。
ERの専門医になってまだ二年だというのに、的確な治療方法だ。
脳外科や胸部外科など、医師になれば憧れる専攻科であっても、誰しもが向いているわけじゃない。
胸部や脳は複雑な構造をしている臓器ということもあり、専攻医になっても安住の地と呼べるほど楽な部署ではない。
常に勉強し続けなければならない分野でもある。
救急専門医は、トリアージするための幅広い知識を要するのは当たり前で、尚且つ迅速に処置を施さなければならない。
約一週間前に身をもって体験した彼女の処置に、意識が遠のきながらも感じた絶大な安心感。
この人が傍にいてくれたら、自分は助かると思わせてくれる声掛けだった。
「専攻は消化器外科?それとも胸部外科ですか?」
「何だと思う?」
「えっ?……総合外科って名刺にはありましたけど、今の話だとCSですか?」
「半分正解」
「半分?」
医師免許取得後、二年間の臨床研修(研修医)を終えた後に専攻を選ぶのだが、臨床研修の二年の間に自分がなりたい医師像を固めなければならない。
消化器外科を専攻すれば、三年目から毎日大腸や小腸、胃といった消化器系の患者を担当することとなる。
けれど、人間の体は複雑にできていて、大腸がんを患っている患者が脳梗塞にならないとは限らない。
免疫が低下すれば、他の臓器に影響が出てもおかしくないからだ。
「半分って、どういう意味ですか?」
「言葉のままだけど」
「………え、もしかして、ダブルボード?!(専攻医を二つ所有していること)」
「正解」
「嘘っ…」
「嘘言ってどうする」
「だって、まだ三十三歳じゃないですか」
「ん、だから?」
「それで、専攻医を二つも持ってるんですか?」
「そうだけど?」
「……」



