白衣を着た悪魔の執愛は 不可避なようです



「これで、貸しが幾つになった?」
「っ……」
「もう、上限超えただろ」
「……」

彼の言う通り、返せないほどの借恩地獄状態だ。

決してお金では返せないご恩。
命には限りがある。
それは自分が一番よく分かっている。

誰かのために犠牲にする命なんて、この世に一つもない。
だからこそ彼の言葉が、行動が、思いやりが心に突き刺さる。

『君と結婚したい』だなんて、女を口説き落すための常套句だと思っていた。
ポンと何でも買い与えれるような、一握りの人たちの特有のお遊びなのかと思っていた。

だけど、体を張ってまで守ってくれた。
その瞬間、漸く分かった。
彼の言葉も、行動も、全部……本気だったのだと。

軽く見てたわけじゃない。
ただ、信じるのが怖かった。
また裏切られるのが、怖かった。

でも、あの瞬間。
私のために倒れた彼を見て、心が叫んだ。
『この人を失いたくないって』

彼はずっと優しさで包み込んでくれていたんだ。
こんな大怪我をさせて気付くなんて、大馬鹿者だ。

「喉乾いたんだけど、まだダメだよな」
「小腸を損傷したと聞いているので、担当医師に確認しないと…。水を飲んで大丈夫か、確認しましょうか?」
「いや、いいよ。そのうち看護師が来るだろ。それにしても、左腹部で助かった」
「……はい」

右側だったら、肝臓を損傷しててもおかしくない。
医師だから、自分の体の状況くらい把握できるだろう。

「采人さん、ありがとうございます」
「何、急に」
「……庇って下さって」
「じゃあ、……御礼なら、ここに」

頬を指差す彼。
冗談……のはずだよね?
でも、どこか期待しているような目をしてた。

「んっ……」
「利子の分ですっっ」

彼の頬にキスを落とすと、一瞬、彼の目が見開かれた気がした。
すぐにフッと笑ったけど、どこか照れてるようにも見えて。

もしかして、心臓が止まりそうなのは、私だけじゃなかった?

こういうのって、吊り橋効果だろう。
――――こんなにも、彼が愛おしく思えるのは。