極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む

 GCU内の女性陣の熱い視線を知ってか知らずか、篠宮先生はコットの中の茉由ちゃんを覗き込み、表情を緩める。
 茉由ちゃんは生まれてすぐ心臓の手術をしたため、篠宮先生が毎日見にくるのだ。

「何か変わったところは?」
「いえ特に。あ、お母様が退院時期について気にしておられましたよ」

 「そうか」と呟いた篠宮先生は、時計を見る。

「あとで三上先生と相談してみる。次の面会は?」
「明日の十四時ごろに授乳指導でいらっしゃる予定です」

 三上先生というのは、茉由ちゃんを担当する新生児科医だ。
 篠宮先生は顎に手を当てて少し黙ったあと、こちらに顔を向ける。

「じゃあその時間に来られるようにする。明日の担当に引き継いでおいてくれ」
「承知しました」

 篠宮先生は白衣を翻してコットの脇へ行き、デスクで電子カルテの確認を始める。
 それを見ながら、理沙は私の耳に顔を寄せた。

「眼福だよねえ。帰る前に見られてよかった」
「そうだね」

 声を潜めつつも興奮を隠しきれない理沙に、笑いながら小声で返す。
 ルックスが整っているのはもちろんなのだけれど、先生は決して愛想のいいタイプではないのに、ベビーを見る目はとてもやさしい。
 そのギャップにキュンとしてしまう。
 三十二歳の彼はまだ独身らしいけれど、結婚して子どもが生まれたらきっと子煩悩ないい父親になるだろう。
 想像すると微笑ましくなる。

 そんなことを考えていた翌日に訪れる事態を、この時の私は一ミリも想像していなかった。