極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む

「道案内をしてくれ」
「はい。ええと、杉並のほうなんですが」
「まずは杉並方面に向かえばいいんだな?」

 恐縮しながら「お願いします」と小さく頭を下げる。
 電車だと病院から自宅までは二十分ほどだけれど、車だとこの時間帯は道が混んでいて時間がかかるだろう。
 申し訳なくて縮こまっていると、運転しながら先生が言う。

「余計なお世話だろうが、無理に連れて行かれそうになるほど酔うのはよくないぞ」
「おっしゃる通りです……ちょっと考え事をしてて飲みすぎてしまったみたいで。そのあと彼に声をかけられてさらに飲んだので」
「またGCUのベビーのことでも考えてたのか?君は仕事熱心だからな」
「いえ、そんなことは……あ、でも確かに子どものことは考えていたかも」

 ぶつぶつと独り言を呟くと、先生は「ん?」と訝し気な声を出す。

「何か言ったか?」
「あっいえ、何も」

 余計なことを口走ってしまい、慌ててごまかした。
 車窓の景色はどんどん移り変わっていく。
 車が揺れているのか頭が揺れているのかわからないけれど、だんだん夢の中にいるような気分になってくる。
 あのままあのひとにホテルにでも連れて行かれていたら、どうなっていたんだろうか。
 不快な顔をされて、冷たい言葉を投げつけられていたんだろうか。

「やっぱり私、誰にも、見られたく……」
「ん?何の話だ?」

 先生の声がずいぶんと遠くに聞こえ、甘い香りの中、私の意識は途切れた。