極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む

 数分の距離を歩き、先生はパーキングの手前の自動販売機でミネラルウォーターを買って私に手渡してきた。

「ずいぶん酔っているだろ。少し酔い覚ましだ」
「あ、ありがとうございます。お金を」
「いや、いい。とりあえず飲んでくれ」

 申し訳ない気持ちになりながらミネラルウォーターを口にすると、アルコールとは違うさっぱりした液体が喉を通って胃に落ちていくのを感じた。
 そして思いつく。

「先生、確認というのはなんでしょうか。茉由ちゃんに何かありましたか?」

 先生は僅かに目を見開き、それからあきれた様子でため息を吐きながら腕を組んだ。

「確認なんてない。申し送りは済んでいるんだから、君しか把握していない重要なことはないはずだ」
「じゃあどうして……」
「助けてほしいと目が訴えていたからな。無理やり連れて行かれているのは傍目でもわかったから、声をかけたんだ」

 目が訴えていた……
 そうかもしれない。なんとかあの場を切り抜けたかったから、声をかけてくれた篠宮先生が救世主に見えたのだ。

「もしかして恋人同士のいざこざだったか?だとしたら俺は邪魔をしてしまったか?」
「いえ、居酒屋でたまたま隣で飲んでいたひとで、本当に困っていたので助かりました。ありがとうございました」
「そうか、それなら良かったが」

 丁寧に頭を下げたら、先生の安堵のため息が降ってきた。