極上ドクターは再会したママとベビーを深い愛で包み込む

 もうすぐ十八時。午後の外来はとっくに終わっており、院内には入院患者の面会に来ているであろうひとがちらほらといて、あとは全て医療スタッフだ。
 エレベーターでなく人目につかない階段を使い、四階へとのぼる。医局に続く廊下で足を止め、壁の凹凸になっている部分に隠れて蹲った。
 今さらだけれど、会えるかどうかもわからないのにこれからどうすればいいんだろう。私服で医局に入るわけにもいかないし、着替えたとしても新生児科の先生方に見られて『今日は休みだろう?』なんて言われたらアウトだ。
 途方に暮れていると、靴音が近づいてきてビクッとした。
 どうしよう。知っているスタッフに見られたら困る。言い訳なんて何も考えていない。
 あたふたしながら頭を抱えて丸くなっていると、
「何をしてるんだ?」
 訝しげな声が上から降ってきてパッと顔を上げた。
 思いきり首を上げないと見えない長身の篠宮先生は、下から見てもイケメンだ。幸運にもお目当てのひとに会えたというのに、まさかこんなにすぐに会えるとは思わず、口をパクパクさせる。
「もしかして鍵を返しにきたのか?」
「は、はい。早く返さなきゃと思って。仕事中だと返すタイミングも難しいので。それと、お話したいことが……」
 濁しながら視線を泳がせ、少し沈黙した。篠宮先生は腕時計に目をやる。
「少し待っていてくれ。準備してくる」
「準備?」
「ちょうど上がろうと思っていたんだ。十五分後に地下駐車場で」
 返事をする前に、先生は足早に去っていく。私はそれをぽかんと見送った。
ここで話しづらいことであるのは確かなのだし、先生はそれを汲んでくれたんだろう。つくづく申し訳ない。