栞がそんなことまで気にするのは珍しい。
まぁ確かに、そのことを知ってる人間はこの学校で栞と瀬能を入れて3人しかいないけど。
「家のことって言っても、そんな大それた話でもないし」
「七帆ちゃん。そこは強がらなくていいんだよ」
「うん、ありがとう。でももう吹っ切れてるし、大丈夫」
手を止めてわたしの目を見た栞に、ニコリと微笑む。
栞にはだいぶ、心配かけちゃったもんな。
わたしの両親は、わたしが物心ついたときから喧嘩ばかりで、決して仲が良い夫婦とは言えなかった。
それでも小学校の学校行事には夫婦で来てくれたし、家族で出かける時間も作ってくれてはいたけど。
でも、わたしが中学に入った頃にはそんなものも一切なくなって、毎日家の中は2人の言い争いの声と大きな物音ばかり。
それから離婚の話になって、去年の夏、両親は別れることになった。



