「そもそもなんだけど、七帆ちゃん抜け出す気あるの?」

「ごほっ……、失礼な。あるに決まってるでしょっ」

「え〜本当に?」



午後の情報の授業は、コンピュータ室でパソコンを使いながらのものだった。


出席番号順でわたしの隣に座る園木 栞(そのき しおり)は、真っ直ぐパソコンの画面を見つめながら疑問を投げかける。


「だって七帆ちゃん、1年のときから同じこと言ってるよ?」

「う……それは言い返せないけど」

「抜け出す気あるならそもそも瀬能くんのところ行かなきゃいいんじゃない?栞ならそうする〜」

「……反論の余地もありません」


ふんわりヘアのポニーテールを揺らしながら、可愛らしいお人形みたいな顔で容赦ないところを突いてくる栞は、中学からのわたしの親友だ。


栞にだけは、瀬能との関係を打ち明けていた。

というか、バレた。


女の勘が鋭い栞には、基本わたしは隠し事ができない。