「それ、なんて曲なの?」
「華麗なる大円舞曲」
弾き終わると、瀬能は惜しむこともなくパタンと鍵盤の蓋を閉じた。
あーあ、もう終わっちゃった。
「タイトル初めて聞いた。曲は聴いたことあったけど」
「ショパンだからな。結構難しいんだよ、これ」
「うん、それは聴いててわかる」
特に最後の方は音の数がすごく多かったもんね。
猫ふんじゃったくらいしか弾けないわたしからすると、正直どうやって弾いてるのか意味不明なくらいだ。
「満足した?」
「うん。とっても」
「じゃあもう怒ってねぇな」
やれやれと本日2度目様子を見せた瀬能は、窓際に繋げて並べられた机の上に寝ころぶ。
そしてそのまま、「10分後に起こして」とだけ言って眠ってしまった。



